2005年12月11日

スローフードのおはなし

Slowfood.jpg今日は前回の続き。
続きと言うか、細くという感じでしょうか。
ちょっとハードワークが続いていたのでやや眠いです。笑
簡単になってしまうかもしれませんが、
スローフードとは?というお話をしたいと思います。

1986年。
ローマのスペイン広場の真ん中にマクドナルドが開店したのをきっかけに、
このスローフード運動は始りました。

ピエモンテのブラという町には多くの知識人がいたんですが、
スローフードの創始者たちもそんな人たち。
もともと食通が集う市民団体で、
「喜びを享受する権利(ディリット・アル・ピアチェーレ)」、
つまり、正しく美食を楽しみたい、という考える人たちだったんです。

当初の活動の指針は三つ。

@消えつつある郷土料理や質の高い小生産の食品を守ること。
A質の高い素材を提供してくれる小生産者を守っていくこと。
B子供たちを含めた消費者全体に、味の教育を進めていくこと。

ふと気づくと、自分たちのまわりにあったおいしい料理、食材がおしくなくなっている。
たとえ地元に密着している食材でも、
スーパーの規格に合わない、割に合わない、輸入品に圧されてしまう。
加工の技術が発達して、昔の味が風化してしまう。
どんどん地域食材が淘汰されていっています。
大量生産・流通が食の均質化を進め、危機に瀕するものがある。
こうした状況に、なんとか「倫理」の一撃を加えたい。
そうした想いがスローフード創始者たちを立ち上がらせました。

でもこれってすごい大変なことですよね。
闘う相手はただ単純に近所の農協さん、というわけじゃありません。
多国籍企業が支配する経済構造という超巨大な壁です。
今では世界中にどんどん浸透している「スローフード」という言葉は、
超巨大な相手に対して、彼らが積極的にメディアを駆使し手足を伸ばし、
何万人もの人を動かそうとした「運動」の結果です。
理論的なグローバリズムを世界中に展開して、
理論武装した世界規模の巨大なコミュニティを作ったんですね。
相手が相手ですから。

スローフード協会は、食材をとりあげてスローフードに認定することが目的じゃありません。
その食材を中心とした食環境を、持続性のある方法で文化的に応援する「運動」です。
認定されたから、はいそれでよし、ということじゃないんですね。

2005年6月には、国際ガバナー会議で運動方針をシンプルに三つにしました。

@buono(ブオーノ) 美味しいこと。
Apulito(プリート) 環境を汚さない。遺伝子組み換えもNG。
Bgiusto(ジュスト) 第三世界での弱者の労働を収奪していないこと。

ABを満たしても、おいしくなければスローフードは取り上げてくれない。
グルメな人々が立ち上げたんですから、当然でしょうか。

世界中にある支部から、スローフードで守るべき候補食材が本部にやってきます。
担当者が検討したのち、海、山、畑へ出向き地元の生産者と討議して、
マーケットを探し、生産組合を組織します。
専門家を送って、出版物で紹介し、協力者を見つけてイベントや食事会など、具体的に支援する。
組織的な支援は大いに成功して、経済効果も高くなります。
これがスローフード協会の「運動」の流れです。

1997年には二つのプロジェクトが動き出します。
「味の方舟:L'Arca(アルカ)」と「砦・庇護:Presidia(プレジディオ)」計画。

絶滅寸前の伝統食材や地域食材を助け出す「方舟」計画は、
前回の記事でもお話させていただきましたね。
リストアップされた食材はメディアに取り上げられたり、
小売店から直接買い付けされるきっかけになったりと有効に働きます。

たとえば、
トスカーナ・コロンナータのラード。
豚背脂を高地のローズマリーと岩塩で漬けたもので、方舟計画のシンボル。
あのミケランジェロが石を切り出したこの地で、
代々石切職人が作っているもので、大理石の箱で熟成されるそうです!

「砦」計画は、さらに大きな困難に直面している食材を救おうとするもの。
現在では200もの食材が対象になって、実務レベルで行動を起こしているそうです。
特に良質でかつ文化的・経済的にも一地域にとって貴重と思われる食材。
指定されると、その食材の生産者とスローフード協会の担当者による基金が立ち上げられ、
直接の保護に乗り出すというわけです。

たとえば。
ツンドラ地帯のトナカイ肉。モンゴル平原の牧畜チーズ。マダガスカルのバニラ。
グァテマラのコーヒーなどなど。

グァテマラでは内戦が続いたために、唯一の産業だったコーヒー栽培が疲弊。
スローフード協会では伝統的な栽培を続けている人たちを支援し、フェアトレードを実施。
直接豆を買い取って、トリノの刑務所で焙煎してもらい、
グァテマラの生産者には売価の5割を渡しているそうです。

トマトソースにするのに最適なイタリアのサンマルツァーノも砦計画の対象。
ちょっと意外な感じもしますね。
世界中の企業が収量を上げるために改変してきたためです。

スローフード・アワードっていうのもあります。
生物の多様性を守っている生産者を探し出して、表彰しちゃおうという計画です。
2002年度には、
佐賀県で古代米を栽培する竹富勝彦氏が日本人として、
初めてスローフード・アワードを受賞しまし、特別賞も併せて受賞しました!

国際会議では、世界中の生産者が一堂に会し、問題を持ち寄っては討論します。
苦しい生産者的な視点をもっと市場や消費者に理解してもらおうと、
いろんなイベントを交えて、色々な問題について語り合われます。
次回、2006年の10月の第二回世界生産者会議では、
世界中から100人のシェフを呼んで、
5000人の生産者と改めて交流してもらおうという計画があるそうです。

食育、味覚の勉強も少し前に記事にしましたが、
スローフード協会でも「食」の大学を開講しているそうです。
地域食材を大事にするために、
歴史、祭、食習慣、調理法などのあらゆる文化遺産を総合的に見直し、学びます。
日本からの留学生もいるみたいですね。

と、なんだがすごく長くなってしまいました。
私も紙面やインターネット上での情報を頼りにこの記事を書いていますが、
こうやって改めてみると、とても哲学的な活動です。
発祥はイタリアですが、世界各地の小さな地域に密着して展開しているからこそ、
世界中に浸透しているんですね。

色々と考えさせられるおはなしでした。
長くなりましたが、読んでいただければ幸いです。

Slowfood.com
ニッポン東京スローフード協会

グルメランキングです。
posted by koji at 23:41| 東京 ☁| Comment(7) | TrackBack(1) | フードコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちわ。
スローフードは本当にいろいろ考えさせられますね。 自分も結構実践していますが、かなり自己満足の世界であることは否定できませんね。
自分は信州に住んでいるので地域の食材を後世に残したいという気持ちも強いです。 だから地元の小学生と一緒にそばや大豆を育てる活動をしたり、学校給食で自分達の栽培した作物を食べてもらえば地産地消の観点でみてもうれしいですよね。 しかしそういった活動も結局自分で好きでやっているのでまあ自己満足でも何でもいいかなあと思いますが。。。。
みなさんにもっと食に関心を持って頂ければ本当にうれしいですね。
Posted by at 2005年12月13日 08:43
スローフードって「流行の言葉」くらいに捕らえていましたが、基本の理念を聞くと終わりのない壮大なプロジェクトなんだということがkojiさんの記事でわかりました。
私も仕事で農家の方を訪ねることがありますが、お話を聞くと「安く買うのは申し訳ない」と思うくらいみなさん一生懸命作ってます。
悪いのは「少しでも安いものを、と値段をたたいて買ってしまう私たち消費者」なんだなーーと反省したりします。
少しくらい高くても一生懸命正しく作られたものを買う、という姿勢を持たなきゃいけないですね。
さりげなくスローフードを実践できる人になりたいです。
Posted by えり子 at 2005年12月13日 09:08
肉さん。
自己満足、と感じるものなんじゃないでしょうか。誰かに点数をつけてもらうものではないのではっきりしませんもんね。
でも、一人一人がそうやって意識的に行動することがとても大事だと思います。
食への関心は、スローフード協会がこんなに頑張っていてもまだまだ興りきっていないようですし、生産者だけでなく、私たち消費者も一緒になって頑張る必要があるんじゃないでしょうか。
でも、結局好きでやってるっていうのが、一番ですよね!

えり子さん。
確かに流行の言葉ですね。捉え違えている人も少なからずいるのではないでしょうか。
でも正直、安く売ってると嬉しくて買っちゃいますよ。笑
えり子さんのように実際に生産地を訪れて見ている人にはそのように感じられるかもしれませんが、普通に生活している人にはやっぱりわかりません。
大事なのは、どうしてその値段なのかってことなんじゃないでしょうか。
消費者も理解しなきゃいけないですが、生産者ももっと消費者に伝えられるように出来ればと思います。
今の農協さんのシステムじゃ難しいんでしょうか。。。素人なのでよくわかりませんが、消費者と生産者を太く結ぶシステムを作るのが私の夢です。
Posted by koji at 2005年12月13日 10:30
スローフードについてここまで詳しく知りませんでした。勉強になりました。

「喜びを享受する権利(ディリット・アル・ピアチェーレ)」という言葉にググッときてしまいました。LOHASもそうですが、体によい、環境によいということだけでは、継続は難しいのですよね。喜びを享受できなければ。素晴らしい言葉です。

スーパーで販売するような野菜はいわゆるF1品種といって、同じような形・サイズの野菜ができるような種で作られているんですよね。在来種を使用した自然農法の野菜はひとつひとつ形もサイズも違った野菜ができる。でも一般消費者は、スーパーで売られている野菜を選択する人が圧倒的に多いですよね。
最近、マスコミなどでも食の安全性を取り上げた記事が多くなり、食材についても関心が高まってきているので嬉しい傾向だと思っています。
Posted by トモ at 2005年12月13日 11:20
トモさん、私こそ勉強になるコメントを有難うございます。
なんでもやっぱり楽しくないと、嬉しくないと続けていけないですよね。
確かに商品としては厳しい現状ですが、やっぱり肉さんのように、その仕事が好きという気持ちが必要だと思います。

F1品種という言葉自体はあまり知られていないかもしれませんが、形のそろった食材よりも不揃いな形の食材に人気があるそうです。
ただ、その人気にあやかってわざと不揃いに仕上げている商品もあるそうで。。。
自分の求めるものの本当の姿がきちんとわかるように賢くなりたいですよね。
ただ、そういった関心が高まっていることは確かにとても喜ばしいことですね!
Posted by koji at 2005年12月13日 13:30
こんにちは!! 「スローフード」という言葉がよく耳に入るようになって来てはいても、その本当の志の意味など深く考えていませんでしたが…、大変勉強になりました!!

「食」って、世界中の人から切っても切り離せない事ですよね、ただ、毎日の忙しさに流されてしまっている事が多いような気がします。

今月、四国に出張に行きます。 いろいろな取り組みが見れるといいなぁ…と期待します。
Posted by Next-JIS at 2005年12月13日 14:32
Next-JISさんコメントありがとうございます。
「食」生活は絶対に切り離せない大事なライフスタイルの一つですが、当たり前すぎて意識しない人のほうが多いかもしれませんね。
食べるのが好きだ!っていうだけでもいいんでしょうけど、いろんなことに関心のある忙しい現代人には取捨選択してしまうところなのかもしれません。。。
四国ですか〜いいですねっ。お土産話を楽しみにしています。
Posted by koji at 2005年12月13日 16:29
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